第17回トピックは,魚のマリネについてのお話です。
マリネ(漬ける)と言う調理方法は、西洋料理だけでなく日本料理、中華料理など世界各国の料理で使われているテクニックで、本来は食材の保存のために発達した方法ですが、ただ単に、保存の為だけでなく、食材に、香り、味を滲みこませたり、食材の繊維を柔らかくしたりする為のテクニックでもあります。夫々の目的に依って漬け込みの方法、呼び方も変わってきます。又、漬ける時間も、食材の性質、大きさに依って異なってきます。
ここでは魚のマリネについてのお話ですが、食材全般での分類の種類を明記しておきます。
*ソミュレ saumurer
香草などを加えた漬け込み塩水液(塩分12%〜18%)、又は漬け込み塩に漬ける事。
主に肉類に使用する事が多い。コンタン、コーン・ポーク、コーン・ビーフ、コンフィ等。
*マリネ mariner
本来は海水、塩水に漬ける方法ですが、ソミュレの塩漬けに対して広範囲での液体漬け(マリナード)を指すようになってきました。マリナードには火を通す漬け汁と火を通さない漬け汁があります。
野菜だとピクルス、魚の塩漬け(アンチョビ等)、肉類のワイン漬け等。
*マセレ macérer
食材に香りを着ける為に、リキュール、シロップ、ワインに漬ける事。
本来は、マリネと同様、液体に漬けることですが、現在では主に、フルーツのマリネに対して用いる用語を指すようになってきました。又、食材に対して少ない液体で漬け込む場合もマセレと言う事もあります。
*マラクセ malaxer
本来は物をこねて柔らかくすることを意味するのですが、漬け込むテクニックでは、ハム用の肉に塩をすり込むことを言います。
又、漬け込みに使用する食材は、塩、塩水、酢、オイル、シロップ、酒類、砂糖等、又はそれらの組み合わせがあり、漬け込む食材や目的に応じて使い分けます。
フランス料理で良く使用する本題の魚のマリネに戻ります。フランス料理にも和食と同じように加熱して漬け込む料理〈南蛮漬け等〉と、しめ鯖、昆布巻きのように加熱しないで漬け込む方法がありますのでそれらの分類をしてみます。
加熱したマリネ料理
*クール・ブイヨンでマリネ
鯖,鰊、ルージェ等で良く使用します。
代表的な料理;Maquereaux au Vin Blanc(冷製、鯖の香味野菜煮)
Hareng mariné(鰊のクール・ブイヨン煮)
白ワインと白ワイン・ヴィネガーを同量づつ鍋に入れ,薄切りにした人参、玉ねぎ、パセリ、タイム、ローリエ、塩を加え沸かし、クール・ブイヨンを作ります。
三枚に卸した魚のフィレの両面に強めに塩、胡椒をし、オイルを塗った平らな深鍋に並べます。クール・ブイヨンを魚が浸る位まで加え、約15分間、ゆっくりと火を通し、煮汁の中で冷まし、24時間ねかしてから小皿に盛り替え,供します。
三枚に卸さないで丸のまま煮ても良いでしょう。
*オイルでマリネ
Escabéche
Basquaise バスク風エスカベッシュ
鰯,小鯵、わかさぎ等の小魚に使用。
代表的な料理;Escabéche Basquaise(バスク風、エスカベッシュ)
Sardines à l’Huile(いわしのオイル漬け)
小魚の頭を切り落とし、内臓を取り、きれいに洗い、水分を良くふき取ります。全体に塩、胡椒をし、平らな深皿に並べます。オレガノ、バジリック等の香料を全体に振り、好みでトマト・フォンデュ、ケイパー、ピクルス等を全体に散らし、レモンのスライス切りを並べます。オリーヴ・オイルをひたひたになる位まで加え,油紙を被せ、オーヴンで加熱し、そのまま冷やします
*オイル、酢でマリネ
魚貝、海老類等、広範囲の魚料理に使用。
代表的な料理;Escabéche Espagnole(スペイン風、エスカベッシュ)、
Escabéche de Fruits de Mer Divers(海の幸のエスカベッシュ、各種)
大きい魚は、三枚に卸します。小魚は内臓を抜き,そのまま使用、海老、貝は食べやすい大きさに切ります。塩、胡椒をし、粉を着け、強火の油でカリッときれいな色に揚げます。香味野菜を弱火の油の中で火を通し、酢を加え,味を整え、魚貝類の上からかけ、そのまま漬け込み、24時間ねかした後、皿に盛り付け供する。
Escabéche
Espagnole スペイン風エスカベッシュ
*酢でマリネ
クール・ブイヨン煮に順ずる。
代表的な料理;Hareng salé au Vinaigre(塩漬けにしんの酢漬け)
塩漬けにした魚を三枚に卸し、牛乳か水に浸けて塩出しします。水分を良く切り、平らなテリンヌ型に並べ、輪切りにしボイルした玉ねぎ、タイム、ローリエを散らします。煮立てた酢を魚がかぶる位まで加え、そのまま6時間漬け込む。
加熱しないマリネ料理
*塩、塩水でマリネ
鯖、鰊,鰯等を塩または塩度25%の塩水に漬け込む。使用する時は塩抜きしてから使う。
代表的な料理;Filet de Hareng salés(鰊の塩浸け)
魚の内臓を抜き、塩漬け、又は塩水浸けにし、目的に応じて塩抜きする。燻製にする事が多い。
*酢でマリネ
ボイルした蛸等をワイン・ヴィネガーやシェリー・ヴィネガーで漬け込む。香味野菜やオイルを加える事もあります。
代表的な料理;Poulpe au Vinaigre et au Basilic(ボイル蛸のバジリック風味,酢漬け)
*オイルでマリネ
燻製にした鰊、鯖,鮭,鮪等を燻製の匂い消しの為や味をまろやかに、やわらかくする為にオリーヴ・オイル等に漬け込む。
代表的な料理;Hareng Fumé à l’Huile d’Olive(燻製にしんのオリーヴ・オイル漬け)
Anchois à l’Huile(塩ひしこいわしのオイル漬け)
Carpaccio de Thon(鮪のカルパッチオ)
燻製した魚を牛乳に24時間浸して塩抜きした後、水気を良く切り、薄切りにした玉ねぎ、タイム、ローリエと魚のフィレを交互に重ねていきオリーヴ・オイルで覆い24時間漬け込む。
カルパッチオは、魚の身を薄切りにし、水気を良く切り、少しのオリーヴ・オイルに浸ける。
*塩と酢でマリネ
日本料理のしめ鯖のように魚貝に塩をした後、酢でしめる調理方法です。フランス料理でも良く使用するテクニックで香料を加えたり、オイルを加える事もあります。
代表的な料理;Maquereaux au Vinaigre Doux(鯖の甘酢漬け)
魚のフィレの両面に強めの塩、香料をふりかけ、3時間ねかした後、水気を良く切り、酢に浸す。周りが白くなるまで冷蔵庫の中で時々裏返し、薄切りにし、皿に盛ります。
*塩とオイルでマリネ
フランス料理で一番良く使う調理方法で鮭、鯛、スズキ、鱈、まと鯛等を三枚に卸して使用します。
代表的な料理;Saumon Cru à l’Aneth(フレッシュ・サーモンのマリネ、アネット風味)
フィレにした魚の両面に塩、砂糖を混ぜた物、香料を擦り込み、軽い重石をし、6時間ねかせた後、水気を良く切り、オイルと香料で漬け込みます。(6時間)刺身の様に薄切りにして皿に盛ります。
その他、塩、酢、オイルの組み合わせもあり、好み、目的に応じて色々なバリエーションを組み合わせると良いでしょう。
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次回トピックは、“スリジェ”グランド・メニューの中から評判のエスカルゴの料理をご紹介します。